目次
1.退職金制度に関する基礎知識
2.退職金制度の具体的な選択肢
3.退職金の申請を放置した場合の影響
4.退職金制度の利用方法
5.退職金制度に関するよくある質問
6.転職時や退職後に気をつける事は
7.最後に・・・
1.退職金制度に関する基礎知識
退職金制度は、転職を考える際に見落としがちな重要ポイントの一つです。今や終身雇用の時代は終わりを迎え、複数回の転職が一般化しています。その中で、退職金制度の有無や種類、受給条件を理解しておくことは、将来の生活設計に大きな影響を与えます。本記事では、転職を控えるすべての方へ向けて、退職金制度の基礎知識から制度の種類、注意点までを包括的に解説します。

1.1 退職金制度の概要と種類
退職金とは、従業員が退職する際に企業から支給される金銭的な給付のことです。これは功労金や慰労金と呼ばれることもあり、企業の就業規則や退職金規程に基づいて支給されます。また、賞与(ボーナス)やインセンティブ制度と違い雇用契約書に記載がある以上は、雇用主は規定に則り支払う義務を有します。
主に退職金制度は、以下の4種類に分類されます。
- 退職一時金制度
- 確定給付企業年金(DB:Defined Benefit Plan)
- 確定拠出年金(DC:Defined Contribution Plan)
- 中小企業退職金共済(中退共)
これらの制度は企業の規模や方針、業種によって導入される内容が異なります。
1.2 退職金制度あり・なしの違いと影響
退職金制度がある企業とない企業とでは、退職後の生活設計や資産形成に大きな差が生じます。制度がある場合、勤続年数や退職理由に応じて数十万円から数百万円の給付が見込めます。一方、制度がない場合は、退職後の資金計画を個人で行う必要があります。
特に中途採用が多い企業やベンチャー企業では、退職金制度を設けていない場合もあるため、入社前に制度の有無を必ず確認しましょう。
1.3 退職金の受給条件と関連する勤続年数
多くの企業では、退職金を受け取るには一定の勤続年数(たとえば3年以上や10年以上)が必要です。また、自己都合退職と会社都合退職でも支給額が変わることがあります。制度によっては、早期退職制度や特別退職金制度を設けている企業もあり、これらの条件も押さえておくことが重要です。
1.4 退職金規定の確認の方法
退職金制度の内容は、以下のような方法で確認することができます。
- 雇用契約書や就業条件明示書に退職金制度の有無や概要が記載されています。
- 就業規則や退職金規程に、支給条件や金額計算方法などの詳細が明記されています。
- 企業が導入している退職金制度(たとえば確定拠出年金など)の運用管理機関の公式ホームページでも、加入内容や運用状況の確認が可能です。
入社前や在職中に制度内容を正確に把握しておくことで、将来の資金計画に役立ちます。
2.退職金制度の具体的な選択肢

2.1 確定給付企業年金(DB)とは?
確定給付企業年金は、企業が従業員の将来の年金額を保証する制度です。退職後に一定額の年金が受け取れるため、老後の生活設計がしやすくなります。企業が運用リスクを負うため、従業員にとっては安定的な制度ですが、企業にとっての負担が大きいため、現在では新規導入が減少傾向にあります。
2.2 確定拠出年金(DC)の特徴とメリット
確定拠出年金は、企業または個人が一定額を拠出し、運用結果に応じて将来受け取る年金額が決まる制度です。個人型(iDeCo)と企業型(企業型DC)があり、自己責任での資産運用が求められます。運用益は非課税となるメリットがありますが、投資の知識が必要であり、運用結果によっては元本割れのリスクも伴います。
▶確定拠出年金・個人型(iDeCo)についてはコチラから。
▶確定拠出年金・企業型(企業型DC)についてはコチラから。
2.3 中小企業退職金共済のメリットとデメリット
中退共(中小企業退職金共済)は、独立行政法人が運営する中小企業向けの退職金制度です。企業が毎月掛金を納め、従業員が退職した際に一時金として支給されます。事業者側の導入が比較的簡単であり、掛金に対する国の助成もありますが、支給額が他の制度よりも少なめであることがデメリットです。
退職一時金の受け取り方と注意点
退職一時金制度では、退職時にまとまった金額を受け取ることができます。使い道の自由度が高い反面、老後資金を計画的に管理しなければ、早期に使い果たしてしまうリスクがあります。また、受け取り時期や受け取り方法によって税負担が変わるため、事前に税理士などへの相談が推奨されます。
3.退職金の申請を放置した場合の影響
退職金の申請を1年以上放置すると、以下のような問題が生じる可能性があります。
1. 時効による受給権の消滅
退職金の請求権には時効があります。一般的に、民法上の債権としての退職金は5年で時効となるとされており、企業の就業規則などで明確に規定されている場合はそれに準じます。つまり、原則として退職後5年以内に請求しなければ、退職金を受け取る権利が消滅する可能性があります。
2. 支給の遅延や手続きの複雑化
退職後の期間が長くなると、企業側でも人事記録の管理や経理処理が煩雑になるため、支給に時間がかかる場合があります。担当者が異動・退職していたり、制度自体が変更・廃止されていたりする可能性もあり、手続きに時間や労力がかかることがあります。
3. 税務処理への影響
退職金は受け取り方によって税制が異なりますが、申請時期によって退職所得控除が適用できない誤処理や、税務署との確認作業が必要になるなど、税務上の煩雑さが増す可能性もあります。
4. 社会保険や公的年金への波及
退職金の受給が他の所得や受給資格に影響する場合もあるため、タイミングによっては年金や医療費負担の区分などに影響を与えることもあります。この辺りは、所轄のハローワークや年金事務所、各市区町村の国民健康保険窓口にてお問合下さい。
4.退職金制度の利用方法

4.1 退職金の積立方法と天引き制度
企業によっては、退職金制度の一環として給与からの天引きや企業拠出による積立が行われます。給与明細で「退職金積立金」などの項目がある場合は、確認しておきましょう。制度が明示されていない場合でも、就業規則や人事担当者への確認が必要です。
4.2 退職金の相場と計算方法
退職金の金額は、業種、職種、勤続年数、役職によって異なります。一般的には、最終給与月額×勤続年数×係数(0.5~2.0程度)で計算されます。たとえば、勤続20年で月給30万円、係数が1.5の場合、退職金額は約900万円程度となります。
ただし、企業ごとに計算式が異なるため、自社の退職金規程を確認することが不可欠です。
4.3 負担と経営者の視点からの制度設計
経営者にとって、退職金制度は人材定着やモチベーション向上の手段である一方、財務的な負担となることもあります。経営環境や業績に応じて制度設計を見直す企業も多く、将来的な制度廃止や変更も視野に入れておく必要があります。
5.退職金制度に関するよくある質問

5.1 退職金制度が廃止される理由とは?
退職金制度が廃止される主な理由は、以下の5つです。
- 企業業績の悪化
- 人材の流動性増加(長期雇用前提が崩れた)
- 退職金以外のインセンティブ導入(ストックオプション等)
- 退職金前払い制度(手当)での支給(個人型iDeCoへの移管)
- 個人事業主として就業の増加
退職金制度の有無は企業の経営方針に依存するため、入社時に確認する姿勢が求められます。
5.2 退職金をもらえないケースとは?
- 勤続年数が支給条件に満たない場合
- 就業規則違反や懲戒解雇などの事由がある場合
- 試用期間中の退職
- M&Aや事業合併等による就業規則や退職金制度の変更・廃止
これらの条件は企業ごとに異なりますが、想定外のトラブルを防ぐためにも、入社時や退職時にしっかりと確認しましょう。また転籍や出向、子会社への異動の際など企業毎に取り扱いや規定が変わりますのでその都度、人事や総務に確認を取る事をお勧めします。
5.3 退職所得控除と税金の影響
退職金は「退職所得」として扱われ、一定の所得控除(退職所得控除)が適用されます。たとえば、20年勤続の場合、800万円までは非課税となるなど、通常の所得よりも優遇された税制が適用されます。
一括で受け取る場合と年金形式で受け取る場合とで課税方式が変わるため、適切な選択が求められます。
6.転職時や退職後に気をつける事は

6.1 定年退職時に注意すべき貰い方
定年退職では一括受け取りと年金形式受け取りの2通りがあります。一括受け取りでは退職所得控除が適用され、税制上のメリットがあります。一方、年金形式では公的年金等控除が適用され、長期的な収入が得られます。家族構成や住宅ローン、扶養控除、他の年金や副収入などを考慮し、自分にとって最も有利な受け取り方を選択することが重要です。
また、一括受け取りと年金受け取りを組み合わせる「併用型」も一部の制度では可能であり、ライフプランや資産状況に応じた柔軟な選択が求められます。いずれにしても、税理士やファイナンシャルプランナーへの相談を通じて、最適な方法を見極めることが大切です。
6.2 転職時に注意すべき事
転職先に退職金制度があるかを確認するだけでなく、以下の点にも注意を払うべきです。
- 勤続年数リセットによる損失
退職金は多くの場合、勤続年数に比例して増えるため、転職でリセットされると長期的な資産形成に影響します。 - 中途採用者の退職金制度対象外の可能性
制度の適用対象が「新卒入社者のみ」、「無期雇用・地域限定社員は対象外」といった制限がある場合もあるため、制度の詳細確認が不可欠です。 - 転職前の退職金清算方法
転職時点で発生する退職金の取り扱い(例:退職一時金として支給されるか、企業年金として積み立てられるか)について把握しておきましょう。 - 自己都合退職か会社都合かによる受給額の差
同じ退職でも理由によって支給額が異なるため、正確に理解する必要があります。
さらに、確定拠出年金制度(企業型DC)を導入している企業では、転職時に前職で積み立てた資産を個人型iDeCoへ移管する必要があります。移管を怠ると「運用指図者」となり、拠出が停止されるだけでなく、資産が非効率な状態で放置されるリスクがあります。移管手続きは早めに行い、将来的な運用益の最大化を目指しましょう。
また、転職活動中は「退職日」と「入社日」の間の空白期間や、健康保険・厚生年金の切り替え、雇用保険の受給資格など、社会保険関連の手続きも併せて注意が必要です。退職金と併せてライフプラン全体の見直しを行う好機として活用しましょう。
7.最後に・・・
退職金制度は、単なる退職時のボーナスではなく、老後の生活やライフプラン全体に密接に関わる重要な制度です。とくに転職が一般化した現代においては、制度の有無や内容を把握し、自身のキャリア設計と照らし合わせる視点が求められます。
企業によって制度の設計や支給条件は千差万別であり、「前職と同じだろう」という思い込みは大きなリスクです。退職金の種類や計算方法、税制面の扱いなどを十分に理解することで、将来的な資産形成に対する備えが整います。
また、退職金制度は受け取り方次第で課税額が大きく変わるため、税理士やファイナンシャルプランナーといった専門家に相談することも一つの方法です。キャリアの変化に合わせて、保険、年金、住宅ローンなど他のファイナンシャル項目ともバランスを取りながら判断することで、より賢明なライフプランを築くことができるでしょう。
―――人生100年時代―――
定年退職後の生活は20~30年続く可能性があります。退職金を単なる「臨時収入」として消費するのではなく、将来の安定収入の一部として長期的に活用していくことが望まれます。退職金制度を正しく理解し、計画的に活用することが、安心して働き続けるための土台となります。
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読者の皆様が、制度をご理解してより豊かで
安定したキャリアと生活を実現されることを願っています。