目次
退職・入社準備〜円満退職と新たなスタートのために〜
1.退職意思の伝え方
2.退職に関する法的知識と注意点
3.ケース別:退職トラブルの対応法
4.退職スケジュールの立て方
5.退職届と退職願の違い
6.引き継ぎ業務のポイント
7.最終出勤日のマナー
8.退職時に必要な年金関連手続き
9.年金・保険関係で他にやるべきこと
10. チェックリスト:退職に必要な主な手続き一覧
11. 入社準備の進め方
12. まとめ:納得のいく転職を完成させるために
13. 最後に:あなたのキャリアはあなたのもの
ステップ8:退職・入社準備〜円満退職と新たなスタートのために〜
はじめに:転職活動の最終ステップへようこそ
転職活動は、自己分析や書類作成、面接といった「選考フェーズ」だけで終わりではありません。実際に内定を得た後、退職手続きから入社準備に至るまでが、転職活動の“最終章”です。
この段階では「現在の職場との円満な別れ」と「新しい職場での円滑なスタート」という、両立すべき二つのテーマが存在します。どちらか一方をおろそかにすると、せっかくの転職が不安や後悔に変わってしまうかもしれません。
特に多くの人が悩むのは、「退職をどう切り出すか」「職場の人間関係に角を立てないようにしたい」「有給消化や引き継ぎはどうすればいいか」など、実務面と心理面の両方で不安を感じる部分です。また、新しい職場で良いスタートを切るためには、入社前に準備しておきたい心構えや行動もあります。
本記事では、円満退職の進め方から入社準備、新生活のスタートダッシュまで、転職成功を“本当の意味で”完了させるためのステップを、実務と心理両面から詳しく解説していきます。
1. 退職意思の伝え方
転職は人生の大きなターニングポイントですが、最後まで誠実な姿勢を持つことが、次の職場でも良い印象をもって迎えてもらえる大きな鍵となります。
円満退職とは、単にトラブルなく辞めることではありません。これまでの職場に敬意と感謝の気持ちを持ち、最後まで責任を全うする姿勢を示すことです。人はいつどこで再び元同僚と仕事で関わるかわかりません。社会人としての信頼を守るためにも、退職のプロセスは丁寧に進めるべきです。
特に中堅以上のビジネスパーソンであればあるほど、過去の職場からの評価や推薦が次のキャリアに影響することもあります。だからこそ、ここでの振る舞いは長い目で見ても非常に重要です。
1.1 退職を伝えるタイミング
退職の意向は「内定承諾後」に伝えるのが基本です。内定が確実でない段階で伝えるのはリスクが高く、職場にも混乱を与える可能性があります。
1.2 誰に、どう伝えるべきか
退職の意思は、まず直属の上司に口頭で伝えることがマナーです。突然の退職届提出ではトラブルの元になります。
- 例文:「ご相談したいことがありまして、お時間をいただけますか。実はこのたび、転職の決意をいたしました。」
- ポイント:冷静かつ丁寧に。感情的な表現や否定的な理由(会社批判など)は避けましょう。
1.3 退職理由の伝え方
退職理由は「前向き」かつ「感謝の意」を忘れずに伝えることが基本です。
- 直属の上司に言う退職理由の「良い例」
1. キャリアの方向性を見直した結果
「○○さんのもとで多くのことを学ばせていただきましたが、今後のキャリアを考えたときに、別の分野で経験を積みたいと考えるようになりました。」
✅ ポイント: 感謝を伝えたうえで、前向きなキャリアの選択であることを強調。
2. 家庭やライフスタイルの変化
「家庭の事情により、これまでのような働き方を続けることが難しくなり、ワークライフバランスの取れる職場への転職を検討しております。」
✅ ポイント: 個人的事情を冷静に伝え、無理がない印象。
3. ステップアップのための転職
「現職で多くの経験をさせていただきましたが、今後はよりマネジメントにも携わりたいと考え、挑戦できる環境を求めて転職を決意しました。」
✅ ポイント: 成長志向と感謝の姿勢をセットで伝える。
- 直属の上司に言う退職理由の「悪い例」
1. 上司や会社への不満をぶつける
「この部署では評価される気がしませんし、上司とも合わないとずっと感じていました。」
❌ 問題点: 感情的・対立的な印象を与え、円満退職になりにくい。
2. 曖昧で誤解を招く言い方
「なんとなく辞めたくなったんです。次も決まってないですけど。」
❌ 問題点: 本気度や計画性に欠け、無責任と受け取られかねない。
3. 待遇面だけを理由にする
「給料が低すぎてやってられないと思ったんです。」
❌ 問題点: 条件面だけを理由にすると、安易に辞める印象になる。
2. 退職に関する法的知識と注意点
2-1. 労働者の退職権
民法第627条により、労働者は2週間前に申し出れば退職可能です。ただし、会社の規定が「1ヶ月前」とされていても、それが常識的範囲なら尊重するのが社会的マナー。
2-2. 引き止められたらどうする?
よくある引き止め理由:
- 「君がいないと困る」
- 「給料を上げるから」
- 「考え直してくれ」
これに対しては、**「すでに次のステップが決まっておりますので」**と冷静に伝えましょう。
3. ケース別:退職トラブルの対応法
ケース1:退職届を受け取ってもらえない
→ 内容証明郵便で提出。証拠を残しましょう。
ケース2:有休を消化させてもらえない
→ 労働基準法では、有休は労働者の権利。消化希望は書面で提出。
ケース3:引き継ぎ対象が不在
→ 資料での引き継ぎに注力し、直属の上司と共有体制を組む。
4. 退職スケジュールの立て方

退職には準備期間が必要です。以下のスケジュールを参考に、円滑な退職を目指しましょう。
時期 | 内容 |
内定受諾後すぐ | 上司に退職の意思を伝える |
1~2週間以内 | 退職日を確定し、正式に退職届を提出 |
1か月前後 | 業務の引き継ぎ、挨拶回り、私物整理など |
最終出勤日 | 挨拶、貸与物返却、最終業務確認 |
5. 退職届と退職願の違い
書類名 | 目的 | タイミング |
退職願 | 退職の「希望」を伝える | 上司に口頭で意思を伝えた直後 |
退職届 | 退職の「確定」を届け出る | 退職が正式に受理された後 |
会社によってはテンプレートがある場合もあるため、社内規定に従いましょう。
6. 引き継ぎ業務のポイント
6.1 引き継ぎの基本ステップ
- 業務内容の棚卸し
- 担当者への引き継ぎスケジュール作成
- ドキュメント(マニュアル、進捗表など)の整備
- 実際の引き継ぎ作業と質疑応答
6.2 引き継ぎ資料の例
- 業務手順書
- 顧客・取引先一覧
- 使用中のツールやパスワード管理表(セキュリティに配慮)
- トラブル対応マニュアル
7. 最終出勤日のマナー
- 上司や同僚に感謝の挨拶
- メールでの挨拶文送付(社内外)
- ロッカー・机の整理整頓
- 貸与物(PC、制服、社員証など)の返却
例文:メールでの挨拶
件名:【退職のご挨拶】○○(氏名)
本文: お世話になっております。私事で恐縮ですが、このたび一身上の都合により○月○日をもちまして退職することとなりました。
在職中は温かいご指導を賜り、心より御礼申し上げます。
今後の皆様のご活躍をお祈り申し上げます。
株式会社××××
〇〇 〇〇

8. 退職時に必要な年金関連手続き
8.1 確定拠出年金(企業型DC)の取り扱い
多くの企業が福利厚生の一環として導入している「確定拠出年金(企業型DC)」ですが、退職時に放置してしまうと重大な不利益を被ることがあります。
退職後にできる選択肢は主に3つです:
- 個人型(iDeCo)への移換
- 次の会社に企業型DCがない場合は、個人型確定拠出年金(iDeCo)に移すのが一般的。
- 金融機関での手続きが必要で、**6ヶ月以内に行わないと強制現金化(=元本割れ+課税)**される可能性があります。
- 次の勤務先の企業型DCへ資産を移す
- 新しい会社がDCを導入していれば、資産を移換できます。
- 新勤務先の人事に早めに相談し、移換書類を提出しましょう。
- 脱退一時金の受け取り(条件付き)
- 海外移住など、確定拠出年金制度に加入できなくなる特殊なケースで適用されます。
※注意点※
- 資産移換しないまま6ヶ月が経過すると、「国民年金基金連合会」に自動移換され、運用停止・管理手数料が差し引かれます。
- 放置による損失を防ぐためにも、早めの手続きを。
8.2 中小企業退職金共済(中退共)制度に加入していた場合
中小企業に勤めていた方で、「中退共(中小企業退職金共済)」に加入していた場合は、退職時にご自身での請求手続きが必要です。
ポイント:
- 中退共の退職金は、会社が積み立ててくれている「掛金」に基づいて支給される。
- 原則として退職後2年以内に、「退職金請求書」を中退共に提出しなければなりません。
- 退職金額の目安は、毎月の掛金と加入年数によって決まります。
手続きの流れ:
- 会社から「退職証明書(または離職票)」を受け取る。
- 中退共公式HPから「退職金請求書」をダウンロードまたは取り寄せ。
- 必要書類(本人確認書類など)を揃えて中退共に郵送。
※注意※
- 転職先でも中退共を導入している場合、掛金の「通算継続」も可能です。
- 請求しないままでいると、将来的に受け取りができなくなるリスクがあります。
9. 年金・保険関係で他にやるべきこと
- 厚生年金 → 国民年金への切り替え(無職期間がある場合)
- 健康保険 → 任意継続 or 国保加入
- 住民税 → 前職分は自分で納付する必要あり(普通徴収)

10. チェックリスト:退職に必要な主な手続き一覧
手続き名 | 担当 | 期限の目安 | 備考 |
退職届の提出 | 本人 | 就業規則に従う | 直属の上司へ提出 |
離職票の受け取り | 会社 | 退職後1〜2週間以内 | ハローワークで 失業手当手続きに使用 |
年金手帳の返却 | 会社 or 本人 | 退職時 | 転職先へ提出または保管 |
確定拠出年金(DC)の移換手続き | 本人 | 退職後6ヶ月以内 | iDeCo or 転職先へ 資産移換 |
中退共退職金の請求 | 本人 | 退職後2年以内 | 自己申請必須 |
住民税・所得税の精算 | 本人 | 退職後すぐ | 最終給与での 精算 or 普通徴収 |
これらの年金・退職金制度の手続きは「会社任せ」にせず、自分で積極的に動くことが重要です。
せっかく積み立てた資産や権利を失わないよう、しっかり確認していきましょう。
11. 入社準備の進め方
1. 必要書類と手続きの確認
11.1 入社に必要な書類(一般的な例)
書類名 | 備考 |
雇用契約書 | 条件や就業規則をしっかり確認 |
健康保険被保険者証 | 社保加入手続きに必要 |
年金手帳 | 厚生年金の加入手続き |
源泉徴収票 | 年末調整のために旧職場からもらう |
住民票記載事項証明書 | 勤務地によっては必要 |
11.2 健康診断
入社前に健康診断を受けることを求められる場合もあります。必要な検査項目が指定されることもあるため、事前に企業側と確認しておきましょう。

11.2 新しい職場での心構えと適応術
1. 第一印象を大切に
- 挨拶は自分から元気よく
- 清潔感のある服装・身だしなみ
- 名前を覚え、名刺交換では丁寧に
2. 職場文化を観察する
新しい職場には独自のルールや雰囲気があります。
- 勤務開始・終了時間の実態
- 昼休みの取り方
- コミュニケーションの頻度やスタイル
「郷に入っては郷に従え」の姿勢が大切です。
3. メモを取る習慣を
- 指示や業務内容は必ずメモ
- 不明点はその場で確認
- 「報・連・相(報告・連絡・相談)」を意識
11.3 人間関係の築き方
1. 初期の人間関係は特に重要
- 自己紹介は明るく簡潔に
- ランチやちょっとした雑談も大切なコミュニケーション
- 職場での「空気を読む力」も評価されます
2. 前職と比較しすぎない
- 新しい価値観を受け入れる姿勢が必要
- 「前の会社では…」を連発すると敬遠されることも

11.5 家庭・生活インフラ面での変更手続き
転職に伴う住所変更・勤務先変更などによって、家庭や生活インフラに関わる連絡や手続きも必要になります。特に扶養家族がいる方は注意が必要です。
1. 子どもの学校・保育園・習い事への連絡
勤務先の変更があると、以下のような対応が求められます:
- 緊急連絡先の変更
- 学校・幼稚園・保育園に登録されている「勤務先・連絡先」を更新しましょう。
- 保護者連絡票・学校連絡アプリなど、書面かシステムから変更届を出します。
- 送迎・時間調整の相談
- 勤務地が変わると登園・お迎え時間の調整が必要な場合があります。
- 長時間勤務の場合は延長保育の利用も検討。
- 転居が伴う場合の学区・入学手続き
- 学区外通学が必要になることも。市区町村の教育委員会に相談を。

2. 生命保険・医療保険・学資保険などの変更連絡
多くの方が会社に届け出た銀行口座から保険料を引き落としているため、転職時には以下の点に注意が必要です。
確認すべきこと:
- 保険料の引き落とし口座に問題がないか
- 前職の給与口座を解約・変更する場合、引き落とし先を別口座へ変更します。
- 会社が変わると給与支給日も変わることが多いため定期預金の積立日などの変更も必要となります。
- 契約者情報(勤務先や連絡先)の変更
- 生命保険会社、共済、団体保険などに連絡して情報を最新化。
- 「団体割引」が適用されていた場合、新しい勤務先で継続可否を確認。
- 保障内容の見直し
- 給与や生活環境が変わると、必要な保障額や内容も変わる可能性があります。
- 保険の見直しは転職直後がタイミングとして最適です。
3. その他の関連手続き(チェックリスト)
項目 | 内容 |
銀行・クレジットカード | 勤務先変更、収入状況により利用限度枠に影響が出る場合も |
携帯電話会社 | 支払方法の変更や名義確認など(特に法人契約だった方) |
郵便局(転送届) | 引っ越しがある場合は必須。1年間郵便物が転送される |
公共料金(電気・水道・ガス) | 転居時の名義変更・契約解除・契約新設 |
実体験:3児の母・Hさん(40代・事務職)
「転職だけでも大変なのに、学校・保育園・保険の連絡も必要でバタバタしました。特に保育園では、勤務先証明書の再提出が必要で焦りました。余裕を持って2週間前くらいから準備することをおすすめします!」

12.まとめ:納得のいく転職を完成させるために
退職と入社準備という「橋渡し」を丁寧に行うことで、転職活動の成果が最大限に生かされます。
- 円満退職は「キャリア資産」になる
- 入社前の準備は「スタートダッシュ」のカギ
- 心と時間の余裕が「順応力」につながる

13. 最後に:あなたのキャリアはあなたのもの
転職活動の終盤──「退職」と「入社準備」は、これまでの歩みを締めくくり、新たなスタートを切るためのとても大切なステージです。
退職の場面では、感情が入り混じることもあるでしょう。
感謝とともに職場を離れる人もいれば、不満や未練を抱えて旅立つ人もいます。
それでも、どんな感情であれ、自分の選択と向き合い、次のステージへ歩き出す覚悟を持つことが大切です。
そして入社準備では、不安と期待が入り混じる日々が訪れるかもしれません。
「うまく馴染めるかな」「職場の雰囲気はどうだろう」と心配になるのは自然なことです。
ですが、環境が変わるということは、あなた自身も変われるチャンスが訪れているということ。
新しい価値観、新しい人間関係、そして新しい可能性との出会いが、きっとあなたの視野を広げてくれるはずです。
人生において、キャリアは大きな比重を占めますが、それがすべてではありません。
あなたがあなたらしく生きるための手段として、キャリアを自由にデザインしていく権利が、あなたにはあります。
周囲と比べる必要はありません。焦る必要もありません。
「納得できるかどうか」を大切にしながら、一歩ずつ、自分のペースで進んでください。
あなたのキャリアは、あなたのもの。
- あなたが選び、あなたが進む道です。
- その選択には、他人の評価ではなく、自分自身の満足が何より大切。
- 今の一歩が、未来のあなたの大きな自信になります。
株式会社S.I.Dは、「そんなあなたの新しい一歩」が踏み出せるようサポートして行きたいと考えています。
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退職も、入社も、「終わり」ではなく「始まり」です。
この記事を読み終えた今、この瞬間からが、あなた自身のキャリア物語の新しい章の始まりです。